【第2話】じゃんけんするの?
「牧先生、まずはクラス分けからします?」
「そうだね、じゃあ俺たち何も子どもたちのことわからないから、いろいろ教えてね」
「はい、わかりました…」
前年度末に個票※をつくり、すでにABCとして3クラスに分けてあったので、まずはその確認から始めようとしたのですが、
「でも、アタシたちには子どもたちの情報何もないし」
「じゃあ、じゃんけんでいっか」
「じゃんけん?!」
たしかに、誰がどのクラスをもつかABCを決めるだけですが、もっとこう、この子は男性教員がいいとか、女性教員がいいとか…
【※個票とは男女別に分けられたカードで、お勉強のできる子、リーダー性がある子、運動ができる子、ピアノが弾ける子、特別な支援が必要な子などのデータも記入してあります。まずは、この個票を元に機械的にクラス分けをします。そしてその後、あーでもないこーでもないをするわけです】
「アタシたちはじゃんけんでいいんだけど、もちたいクラスあります?」
「え?オレっすか?」
ありません。学年の3分の1は前年度にもった子たちです。ただ、
「このクラスがいいなぁ」みたいなのは正直ありました。
「では、じゃんけんでいいね」
「はーい♪」
「はい…」
「では!」
「「「じゃーんけーん」」」
「「「ぽいっ!」」」
もちたかったクラスを引きました。
あとのふたりは…
「どんな子がいるのかな♪」
「そうだね」
こんなもんでしょう。だって子どもの情報がないのですから。オレはもちたかったクラスを引けてうれしかったんですけどね。
この子たちと2年間を一緒に過ごすのか。
この子たちを卒業させるのか。
と、すでに卒業式のことを考えて、少しセンチメンタルな気分になり
またオレが担任することになった子たちは喜んでくれるかな。
元4年1組と3組の子たちは喜んでくれるかな。
という、期待と不安もあり
どんなクラスにしようか。
男子も女子も分け隔てなく、みんな仲が良くて
笑顔が耐えない、毎日楽しくいられるような、そんなクラスにしたい。
それでいて、やるときはやる。そんなクラスにしたい。
と、ひとりでニヤついていました。なのに…
「駅前においしい飲み屋さんがあるみたいですよー♪」
「お、じゃあ、そこで学年会しようか」
現実に引き戻されました…
「きょ、教室の準備とかいいんですか?」
新年度の始まり、準備は盛り沢山です。初日は学級開きなので、一日中学級活動で終わりますが、 次の日からは授業も始まります。くるくる回る当番表やらなんやら、教室のインテリアも作らなくてはなりません。
「さ、行きましょうー♪」
明日残業すればいっか…(T_T)