【第16話】主事さんは何でもできる
1980年代前半までは、学校用務員が校舎内の専用室や学校構内の一角に設置された住居で、住み込みで働くのが一般的だったらしいです。なので、主事室には小上がりの和室があるところが多くあります。二日酔いのときは休ませてもらったこともあります。やっぱり畳はいい。
そんな用務員さんは、いつからか「主事さん」と呼ばれるようになりました。近年では、校務員、学校主事、技能員、管理作業員、スクールヘルパーなどへの改名も行われているみたいですが、オレはずっとお名前で呼んでいます。
主事さんは、学校のお掃除をはじめ、何でもやってくれます。オレは困ったことがあったらすぐに相談していました。主事室が大好きでした。
休み時間にはタバコを吸いに行ってましたし、用がなくても遊びに行って、お茶を頂いたり、お菓子を頂いたり…
そこで、給食のなくなった夏休みに思いついたいいこととは
主事さんに昼メシを作ってもらうという名案。
「成島さーん、おはようございます!」
「あ、先生おはよー」
「暑いですね!熱中症気をつけて下さいね!」
「そうよねぇ、水分補給しないとね、ビールで」
「ビールは水分補給になりませんよ!」
当たり前ですが、ビールはアルコールです。ビールに限らずアルコールにはもともと利尿作用があります。ということは、汗をかいた後にビールを飲んで水分を補給したつもりでも、実際は、大半が体の外へ出てしまっていることになります。
汗をかいた分だけ体内は脱水状態になっているので、しっかり水分補給をすることが大切なのに、ビールを飲んでしまったら、ますます脱水状態になってしまうのです。
「こう暑いと食欲なくなりますよねー」
「そうね、冷たいもの食べたいわよね」
キタ━(゚∀゚)━!
冷たいもの!
もう少し!
「毎日弁当も飽きちゃいますよねー」
「主事室でそうめんでも茹でようか?」
キタ━(゚∀゚)━!
そうめん!
「いいっすね! オレ買ってきますよ!」
「そういえば、こないだ校舎裏にみょうがが生えてるの見つけたのよ」
「へぇ〜 あんなとこに生えてるんですか!」
校舎周りをお掃除している、主事さんならではです!
そういや、春には菜の花をおすそ分けしてくれたなぁ…。
プール前の使っていない花壇でスイカも作っていたような…。
「ミニトマトも採ってこようかしら」
「それは2年生のだから、ダメですね…」