【 ブログ ライトノベル 】ありがとう、先生って呼んでくれて。

教師は生徒に恋をしろ、そしてその恋、忘れるな。愛する人を忘れない限り 、人は道を踏み外さない。

【第1話】 キャリアと体育会系女子がやってきた

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「お〜い、新5年担任〜」

 

って、校長に呼ばれましたが、オレしかいないんですけど…

というのも、3クラスある学年を持ち上がったのは教員2年目のオレひとり。

あとのふたりは転入教員らしい。

オレ、まだ学校のことそんな知らないのに…

 

「ひとりはバリバリのやり手のキャリアが来るぞ」

 

管理職候補者選考に受かっているらしい。

管理職目指す先生と一緒に組むのか。

毎日怒られちゃうのかな…オレ(T_T)

 

「もうひとりは女だ、砲丸投げの選手だったらしいぞ。

頼もしいふたりが来てくれてよかったな!!」

 

嘘でしょ…

砲丸投げって…

どんな女性でしょう(T_T)

バリバリのキャリアと体育会系女子。しかも砲丸投げ

 

校長がニヤニヤしながらタバコをふかしています。しかも、校長室で。

(※今は、厚生労働省受動喫煙防止対策により、学校は「敷地内全面禁煙」となっていますが、当時は校内でも吸えました。)

実はこの校長も今年度異動してきました。この校長もかなりの曲者のようです。

 

「ゴンゴン!」

「どうぞぉ〜

 

力強いノック。砲丸投げだな…

なんと二人揃って校長室に入って来ました。

 

「牧です。」

 

この人がバリバリのキャリアか…

この人にオレは毎日怒られるのかよ…

 

「はじめまして岡本です。」

 

砲丸投げ

たしかに投げそうだ…

 

バリバリのキャリアと砲丸投げ、そして教員2年目のオレ。

もう、不安だらけでこの先どうなるか心配でなりません。

 

「アタシたち、この学校のこと何もわからないからよろしくお願いしまーす♪」

「よろしくね、頼りにしてるから」

 

なんだろうこの軽いノリは…

しかもキャリアは目を合わせてくれない…

「2年目なんで、まだ右と左もわからないのでよろしくお願いします…」

 

「右と左ぐらいわかるでしょう〜」

「頼りにしてますからね」

 

いやいや本当にわからないんですってば。ところで…

「岡本先生は砲丸投げやってらしたと社長が※…」

 

「やってないわよ!」

 

(あの校長めーーーーー!!!)

やはりかなりの曲者でした。

 

【※校長のことを「社長」といいます。大概どこの学校でも校長を「社長」と呼びますが、副校長を「専務」と呼ぶことはあまりないです。あだ名を付けられてしまうことはよくありますが】

 

「岡本先生は酒飲めそうだな」

「好きですけど、そんな飲めないですぅ〜♪」

(絶対好きでしょ、お酒…)

 

「やっぱり、あれか。好きな酒は酔鯨※か?」

「校長先生、アタシの体型見て言ってません?」

(この校長やべーかも…)

 

【※酔鯨(すいげい):高知の日本酒の銘柄。鯨が水を飲むようにお酒を飲むことを鯨飲といいますが、酔鯨の由来は幕末の土佐藩山内容堂に由来しています】

 

「じゃ、3人揃ったし、学年会しましょうか」

 

新学年のスタートってこういうノリなの!?

 

【第2話】じゃんけんするの?

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「牧先生、まずはクラス分けからします?」

「そうだね、じゃあ俺たち何も子どもたちのことわからないから、いろいろ教えてね」

 

「はい、わかりました…」

前年度末に個票※をつくり、すでにABCとして3クラスに分けてあったので、まずはその確認から始めようとしたのですが、

「でも、アタシたちには子どもたちの情報何もないし」

「じゃあ、じゃんけんでいっか」

 

「じゃんけん?!」

 

たしかに、誰がどのクラスをもつかABCを決めるだけですが、もっとこう、この子は男性教員がいいとか、女性教員がいいとか…

 

【※個票とは男女別に分けられたカードで、お勉強のできる子、リーダー性がある子、運動ができる子、ピアノが弾ける子、特別な支援が必要な子などのデータも記入してあります。まずは、この個票を元に機械的にクラス分けをします。そしてその後、あーでもないこーでもないをするわけです】

 

「アタシたちはじゃんけんでいいんだけど、もちたいクラスあります?」

「え?オレっすか?」

 

ありません。学年の3分の1は前年度にもった子たちです。ただ、

「このクラスがいいなぁ」みたいなのは正直ありました。

 

「では、じゃんけんでいいね」

「はーい♪」

「はい…」

 

「では!」

 

「「「じゃーんけーん」」」

「「「ぽいっ!」」」

 

もちたかったクラスを引きました。

あとのふたりは…

「どんな子がいるのかな♪」

「そうだね」

こんなもんでしょう。だって子どもの情報がないのですから。オレはもちたかったクラスを引けてうれしかったんですけどね。

 

この子たちと2年間を一緒に過ごすのか。

この子たちを卒業させるのか。

と、すでに卒業式のことを考えて、少しセンチメンタルな気分になり

 

またオレが担任することになった子たちは喜んでくれるかな。

元4年1組と3組の子たちは喜んでくれるかな。

という、期待と不安もあり

 

どんなクラスにしようか。

男子も女子も分け隔てなく、みんな仲が良くて

笑顔が耐えない、毎日楽しくいられるような、そんなクラスにしたい。

それでいて、やるときはやる。そんなクラスにしたい。

と、ひとりでニヤついていました。なのに…

 

「駅前においしい飲み屋さんがあるみたいですよー♪」

「お、じゃあ、そこで学年会しようか」

 

現実に引き戻されました…

 

「きょ、教室の準備とかいいんですか?」

 

新年度の始まり、準備は盛り沢山です。初日は学級開きなので、一日中学級活動で終わりますが、 次の日からは授業も始まります。くるくる回る当番表やらなんやら、教室のインテリアも作らなくてはなりません。

 

「さ、行きましょうー♪」

 

明日残業すればいっか…(T_T)

【第3話】ターニングポイント

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「おねーさーーーん!生みっつーーー!」

 

来てしまいました…

しかも、おばさんを「おねーさん」と呼ぶ体育会系女子…

 

駅前の美味しい飲み屋〜漁火〜

旬のおつまみやお魚がおいしいのなんの♪

仕事はたっぷりあるんですけどね…(T_T)

 

「乾杯!」

「かんぱーい」

「かんぱーーーい♪♪♪」

 

先輩方ふたりは余裕の表情でグイグイいきます。

もういいやと思い、オレも腹をくくりました。

 

「やっぱさー、素敵な学年にしたいよねー」

 

牧先生の第一印象は厳しそうな人だったのに、だんだんと口調がくだけてきて、教育論を熱く語り始めました。なんだか、これからの2年間が楽しみになってきました。

 

「アタシ、爆弾※独り占めするから♪」

 

岡本先生はというと、食べまくっています…

そして、飲みまくっています…

しかも、爆弾独り占めですから。オレと牧先生は仕方なくもう1つ頼み、ちゃんと分けました…

【※爆弾:お刺身のブツ切りと、納豆やオクラ、山芋などのネバネバ食材に、卵をどーんとのっけただけの、豪快な料理です!

 

お酒を飲みながらでもできるもんです、学年会。むしろいいかもしれません。だって、

 

発想がどんどんヤバくなっていくから

 

「こんな授業をやってみよう!」と、いろいろアイデアがわいてきます。オレも酔ってきたのか、だんだんとゾーンに入っていき、気づけば学習指導要領※のことなんか無視した授業プランを熱く語ってしまいました。すると…

 

「いいねぇ〜、素敵だね〜それ」

 

牧先生…(T_T)

いいんすか、マジで。

【※学習指導要領:全国のどの地域で教育を受けても、一定の水準の教育を受けられるようにするため、文部科学省では、学校教育法等に基づき、各学校で教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準を定めています

 

「法の盲点」という言葉が、オレたちの合言葉になりました。悪巧みではありません。面白いことを思いついたら、それを学習指導要領と照らし合わせて、いけるかどうかを相談するという。

いえ、先輩二人は経験の中からちゃんと考えていたのでしょう。オレは子どもたちが喜ぶんじゃないかと、ただただ「おもしろいこと」ばかり考えていただけです。

そんなオレを両側から優しく支えてくれて、本当にいい学年に恵まれたなと思いました。

 

「ねぇーさーん!オレの爆弾食ったでしょー!!」

【第4話】ターニングポイント ver.2

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酔った勢いからか、岡本先生を「ねーさん」と呼ぶようになってしまった。いまさら元に戻せない。こんな風に親密になれる飲み屋の学年会はいいかもしれない。

 

自分の仕事が進まないけど…(T_T)

 

もう一つ変わったこと。それは…

 

オレの服装。

 

初任の頃はずっとスーツで通勤してたけど、もう普段着でいいやと…

通勤も授業もすごくラクになった。スーツの上にジャージを羽織るという、教員特有のスタイルもしなくていい。髪の毛の色も少し茶色く戻したし。

着替えるのは体育のときや、保護者会や個人面談、行事関係などのイベントのときだけ。もちろん、髪の毛は茶色いまま。

 

別に管理職を目指しているわけじゃないから、そんな格好では出世できないぞと言われても平気だし。

何より、人を見た目で判断してはいけないとよく言うし。

 

スタイリッシュな服は持ってないから、デニムにTシャツ、足元はスニーカー。しかも、通勤時はリュックを背負って、ゲームボーイ※をいじっているという…

 

もう、職業不詳。

 

【※ゲームボーイ1989年4月21日任天堂発売した携帯型ゲーム機任天堂2003年2月14日に発売した携帯型ゲーム機。オレが遊んでいたのは「ゲームボーイアドバンスSP」で、 ゲームボーイの次に発売された「アドバンス」、その上位機種として位置付けられている。

 

だから、授業の合間に子どもたちに聞いてみた。

 

「オレ、何やってる人に見える?先生に見える?」

 

帰ってきた答えは…

 

「大学生みたい」

「先生には見えない」

「つーか、変なおじさん

 

おじさんっていうなぁーーー!!!

まだ自覚してないんだからぁーーー!!!

 

ウォルト・ディズニーも言っています。

 

人はいつから子どもでなくなるんだい?

 

「加齢臭がしてきたら」

「ハゲてきたら」

「お腹が出てきたら」

「つーか、ハタチからじゃん?」

 

ふん。どれも当てはまってはいないじゃんか。

年齢ぐらいだぞ。

くやしくなんかないもんねー。

ばーかばーか。

【第5話】絶対に許せないこと

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全教科、全単元、ぜーんぶ初めて。 

当たり前ですが、ぜーんぶ教材研究しなきゃならない。

 教師ですから、教科書に書かれていること全部を教えることができなければいけない。

 

白地図」なんてやらせるくせに、オレはすべて埋める自信がない。

 

「県庁所在地」なんか、子どもたちのほうがよく覚えてる。

 

子どものころ、もっとちゃんと勉強していればよかった...(T_T)

 

 

ということで、必死に教材研究しなければなりません。だって

 

「先生」ですから。

 

教科書ってつまらないでじゃないですか、正直。

だから、どうやったら面白く勉強できるかなって考えるわけですよ。

 

5年生社会【日本の国土と人びとのくらし】

 

○ 日本の国土に関心をもち,世界の主な大陸と海洋,主な国の名称と位置,日本の位置 と領土,日本の地形や気候の概要,自然条件から見て特色ある地域の人びとの生活につ いて意欲的に調べ,国土に対する愛情を育てることができるようにする。

○ 世界の主な大陸と海洋,主な国の名称と位置,日本の位置と領土,日本の地形や気候 の概要,自然条件から見て特色ある地域の人びとの生活について,地図帳や地球儀,統 計などの各種の資料を活用して意欲的に調べ,国土の環境が人びとの生活や産業と密接 な関係をもっていることを具体的に考え,白地図にまとめたり,日本の位置を世界の広 がりの中でとらえて表現したりすることができるようにする。

○ 世界の大陸や海洋と日本の国土との位置関係や,日本は周囲が海に囲まれた島国であ ることなど日本列島の特色,日本の地形や気候の概要,自然条件から見て特色ある地域 の人びとの生活について理解できるようにする。

 

こんなの読む気なくなります。ただ、

 

白地図にまとめる

 

ってことはわかりました。

 

「なにしよっかなぁ〜」

 

いっつもこんな感じ。だって、教科書だけで授業してるとつまらないから。

もちろん、何も思い浮かばなときは教師用指導書※に頼ります。

 

【※教師用指導書:先生が授業時に参考にする本で、板書の仕方、問題の解答、

教科書の内容の詳しい解説、テストの出題例などが書いてあります。

意外と高価な物で、教育関係者でないと入手が困難なのに、メ◯カリ、ヤ◯オクなどでも販売されていました】

 

ということで、社会の単元は、自分の興味がある都道府県の「旅行ガイド」を作成し、日本の国土を勉強していくことにしました。

 

旅行ガイドですから、その土地の特徴、観光地、特産品や名産品などを調べなければなりません。

そういったものは、図書室の資料やインターネットで調べられますが、意外と厄介だったのが、

 

「交通手段」

 

ネットで簡単に調べることができますが、イマイチ距離感とか所要時間とかイメージが難しいようです。

だって、子どもって「あと何分で着く?」ってよく言いますよね。

そういうときに生き生きとしているのは「電車好きな子」です。

 

九州新幹線はまだ鹿児島ルート開通してないからなぁ…」

 

「い、いけちゃん、どこそれ?」

 

「・・・・・。」

 

「あのー、北海道まで新幹線で行けますかね?」

 

「八戸までしか行けないよぉ!」

 

「すげー詳しいなぁ!いけちゃんやるねぇ」

 

勉強が苦手で、少し個性が強めな池田くんは、クラスの中でも少し浮いてしまうところがありました。

 

なので、そんな場面を見かけるたびに、言葉かけを多くしたり、わざとちょっかいを出したりしていました。

 

彼は特別なんじゃないと、クラスの子たちにアピールするように。

 

でも、やっぱりそんなことだけじゃ防げないですよね、



「いじめ」ってやつは…





【第6話】イジメを無くす方法 act1

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「うわっ、こっち投げんなよ!」

 

「気持ち悪〜い!」

 

「きったね〜」

 

「きたな〜い!」

 

いけちゃんの帽子を取り上げ、その帽子をまるで「バイ菌」扱いするように投げあっていました。

 

イジメを目の当たりにした時のショックは相当なものです。

 

イジメられている子を見るのもつらいですが、イジメている子を見つけるのもつらいもんです。

日頃から「仲のいいクラス」にしたいと言っているのに、裏切られた気もちになったのかもしれません。

 

「…おい、いまなにしてた? …なぁ、覚えとけよ」

 

それ以上何もいえませんでした。

いえ、あえて言わなかったのかもしれません。

一番いい指導としては、その場で話をしたほうがよかったのかもしれませんが、そんなんじゃ気が済まなかったのでしょう。

 

 

「イジメは絶対に許せないんですけど」

 

ある日の放課後、牧先生とねえさんに相談しました。(職員室でね)

 

「現場を見ちゃったんですよね…」

 

といいながら、牧先生とねえさんに「どうしたらイジメがなくなるか」を相談したかったのではなく、思いついちゃんたんです。

 

イジメを無くす方法を。

 

どうしたらイジメがなくなるのかを考えれば、いろいろ方法はあるでしょう。

オレが考えたのは

 

4人を1組と3組で預かってもらう

 

という方法でした。

 

「いいよぉ〜」

 

「交換留学みたいなもんだね♪」

 

え、まじでいいの?(・_・;)

 

毎週、授業の進行具合は学年で確認しあっているので、「教える人間が変わるだけで、授業の内容は変わらない」これがミソです。

保護者にも連絡を入れて、クラスのため、学年全体のためにも協力していただきたいと事情を説明しました。

 

「がっつりやってください!」

「うちの子がんがん泣かしちゃって!」

「牧先生たちにも宜しくお伝え下さい」

「先生に任せる!お願いします!」



保護者の方々もとても協力的で、本当に助かりました。

 

もちろん、管理職にも報告しました。

 

「いいんじゃねーか? ただ、俺のせいにするなよ」

 

いや、いざとなったらしますよ…

 

これで、準備は整いました。

 

 

今こんなことやったら大問題でしょうけど

 

次の日

 

「人が傷つくことするようなヤツ、うちのクラスにいてほしくない。1組と3組に行ってくれ」

 

目を合わせることなく、ただただうつむいてじっとしている4人。

 

「早く出てってくんないかな、授業が始めらんないんだけど」

 

クラスの中にも重たい空気が張り詰めています。

 

「出てけっっ!」

 

そろそろと教室を出て行く4人。

 

「イジメたんだって? バカタレ!」

 

「アンタたち、ほんっと最低だね」

 

1組と3組の1時間目は「道徳」です。これも計画済み。

もちろん、うちのクラスも「道徳」です。



イジメられたらどんな気もちがするかを話し合いました。「イジメはよくない」とか「かわいそう」とか、言葉では簡単に言えるんです。そんな授業なんか意味ありません。

 

「はーすっきりした。これでうちのクラスからイジメがなくなったなー」

 

子どもたちは複雑な表情でいます。

 

その日の放課後

 

「なんか馴染んじゃってるよ」

「給食なんか楽しそうに食べてたよ?」

 

「「どうする?」」

 

どうすると言われても、オレも1日で懲りるだろうと思っていたので困りました。

 

「もうちょっとやらせてもらっていいですか?」

 

「「いいよ〜」」

 

延長戦突入!



【第7話】イジメを無くす方法 act2

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「いい天気だなぁ〜 校庭で遊ぶかぁ♪」

と、遊ぶ気なんかないのに。

 

子どもたちは今日も複雑な表情。

教室の空気もどんよりと思いまま。

 

「先生、いつになったら4人戻すの?」

 

「さぁ?」

 

1組と3組に留学中の4人は笑顔を見せることもあったというのに、2組の子たちはオレがつくり出す重苦しい空気に耐えられないようです。

 

2組の子たちがこんなにオレに「イジメられてる」のに、反省している様子が見られない4人を許す訳にはいきません。

 

イジメられた子の気もちは理解できると思うんです。 

「ごめんなさい」なんて、簡単に口にできると思うんです。

 

なんでオレが怒っているのか、そんなことを分からせたいんじゃないんです。

 

分かってほしいのは

 

イジメた人間はどんなふうに見られるか

 

イジメは周りの人も悲しませること

 

そんなことも考えてほしかったのかもしれません。4人だけじゃなくて、みんなに。

 

当時はそこまで考えてないですけど



「あっちゃん、先生に謝ったら?」

 

「許してくれないよ…」

 

女の子たちが動き出したようです。廊下の隅でこそこそ話しています。

 

「しょうた達も考えなよ!」

 

「…わかってるよ」

 

女子がんばれ!男子しっかりしろ!と、心の中で思っていました。



あーちゃんが聞いてきました。

 

「先生、どうしたら許してあげるの?」

 

(ん? オレが許すんじゃないよな…)

 

「それを考えてほしいんだけどね」

 

先生っぽく言ったつもりでしたが、何も思いついていませんでした。

もっといい答え方があったかと思います。

 

昼休みに4人そろってやってきました。

 

「ごめんなさい…」

 

(おせーよ!)



「オレはいいよ、いけちゃんとクラスのみんながどう思うかね」

 

本当は「楽しかったみたいじゃん」と、ねちねちいこうかと思ったのですが、やめときました。だって、早く戻ってきてほしかったから…

 

5時間目は「道徳」にしました。

 

4人が語り、クラスのみんなで話し合いました。

 

「傷つく」とか

「嫌な思いする」とか

「恥ずかしい」とか

 

言葉での表現はそんなもんですけど、心のなかにきっと何か残してくれたはず。



「別にさ、いけちゃんに謝れなんて言わねぇよ。4人だけじゃなくて、このクラスがこれからどうなっていくか、それを見させてくれよ。いけちゃんもさ…が、がんばろ?」

 

いけちゃんへの声かけは、うまいこと言えませんでした…(T_T)

 

4人はその後どうなったか

 

どうやら、ちゃんと謝ったようです

 

クラスはどうなったか

 

いけちゃんはあいかわらずです

 

ただ、イジメみたいなのはありません

 

担任が率先してイジってますけど

 

愛をもって。