【第6話】イジメを無くす方法 act1
「うわっ、こっち投げんなよ!」
「気持ち悪〜い!」
「きったね〜」
「きたな〜い!」
いけちゃんの帽子を取り上げ、その帽子をまるで「バイ菌」扱いするように投げあっていました。
イジメを目の当たりにした時のショックは相当なものです。
イジメられている子を見るのもつらいですが、イジメている子を見つけるのもつらいもんです。
日頃から「仲のいいクラス」にしたいと言っているのに、裏切られた気もちになったのかもしれません。
「…おい、いまなにしてた? …なぁ、覚えとけよ」
それ以上何もいえませんでした。
いえ、あえて言わなかったのかもしれません。
一番いい指導としては、その場で話をしたほうがよかったのかもしれませんが、そんなんじゃ気が済まなかったのでしょう。
「イジメは絶対に許せないんですけど」
ある日の放課後、牧先生とねえさんに相談しました。(職員室でね)
「現場を見ちゃったんですよね…」
といいながら、牧先生とねえさんに「どうしたらイジメがなくなるか」を相談したかったのではなく、思いついちゃんたんです。
イジメを無くす方法を。
どうしたらイジメがなくなるのかを考えれば、いろいろ方法はあるでしょう。
オレが考えたのは
4人を1組と3組で預かってもらう
という方法でした。
「いいよぉ〜」
「交換留学みたいなもんだね♪」
え、まじでいいの?(・_・;)
毎週、授業の進行具合は学年で確認しあっているので、「教える人間が変わるだけで、授業の内容は変わらない」これがミソです。
保護者にも連絡を入れて、クラスのため、学年全体のためにも協力していただきたいと事情を説明しました。
「がっつりやってください!」
「うちの子がんがん泣かしちゃって!」
「牧先生たちにも宜しくお伝え下さい」
「先生に任せる!お願いします!」
保護者の方々もとても協力的で、本当に助かりました。
もちろん、管理職にも報告しました。
「いいんじゃねーか? ただ、俺のせいにするなよ」
いや、いざとなったらしますよ…
これで、準備は整いました。
今こんなことやったら大問題でしょうけど
次の日
「人が傷つくことするようなヤツ、うちのクラスにいてほしくない。1組と3組に行ってくれ」
目を合わせることなく、ただただうつむいてじっとしている4人。
「早く出てってくんないかな、授業が始めらんないんだけど」
クラスの中にも重たい空気が張り詰めています。
「出てけっっ!」
そろそろと教室を出て行く4人。
「イジメたんだって? バカタレ!」
「アンタたち、ほんっと最低だね」
1組と3組の1時間目は「道徳」です。これも計画済み。
もちろん、うちのクラスも「道徳」です。
イジメられたらどんな気もちがするかを話し合いました。「イジメはよくない」とか「かわいそう」とか、言葉では簡単に言えるんです。そんな授業なんか意味ありません。
「はーすっきりした。これでうちのクラスからイジメがなくなったなー」
子どもたちは複雑な表情でいます。
その日の放課後
「なんか馴染んじゃってるよ」
「給食なんか楽しそうに食べてたよ?」
「「どうする?」」
どうすると言われても、オレも1日で懲りるだろうと思っていたので困りました。
「もうちょっとやらせてもらっていいですか?」
「「いいよ〜」」
延長戦突入!